BlogKenJr.
カスガシカオ志望である作者が、広く世の中に認知してもらうためのあらゆる実験を行うための日記。またカスガシカオになるまでの過程を随時報告していきます。
引き出し
あすなろ出版の編集者坂東は、持ち込みをしてくる作家志望の受付役を担当している。

今日現れた笠茂健人はかなり年配で、おそらく何年も持ち込みを続けているのだろう。

「これは期待できないな。」

と思いつつ、坂東は笠茂の応対をする。



編集部の片隅にある、編集者の仮眠場所を兼ねた、持ち込み作家用の応接セットに彼を案内した坂東は、

「じゃあ早速見せてもらいましょうか。」

と原稿を催促する。

しかし笠茂は原稿の代わりにパソコンのフラッシュメモリーを一つ取り出した。

「坂東さん、今おたくで急に必要な原稿はないですか?どんな分野でもいいですよ。」




続きを読む

[テーマ:ショートショート | ジャンル:小説・文学]

【2006/06/04 14:46】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(2) |
?
織葉愛は、生まれた時から病院暮らし。

完全に隔離された病室で毎日を過ごす。

彼女はその病室からも出たことが無い。

医師は毎日、愛の診察に現れる。

愛の病気は非常に感染力の高い伝染病のため、医師は常に全身を覆いつくす保護服とマスクをしている。

愛は毎日やってくる担当の医師の顔すら見たことは無い。

愛は言語に障害があるため、筆談か、パソコンの画面とキーボードを使って会話する。

それらは全て医師から教わったことである。



続きを読む

[テーマ:超短編小説 | ジャンル:小説・文学]

【2006/05/26 01:04】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) |
一+二=三
工藤祥一は生まれつきの難病で、生まれた頃からずっと入院生活をしている。

血液の病気で、今のところ治療法が無く、いつ死んでもおかしくない。

彼の両親は優しく、毎日彼を見舞い、励ましてやる。

企業の社長をする父親は、持てる全ての金をつぎ込んで、祥一の治療に当たらせる。

そんな両親の優しさに触れ、感謝しながらも、まだ見ぬ外の世界に憧れ夢見る祥一。

そしてその夢が叶わぬことを自覚させるように、体を蝕んでいく病。

次第に夢をあきらめ、絶望の淵に祥一は落ちていく。



続きを読む

[テーマ:短編小説 | ジャンル:小説・文学]

【2006/05/23 18:49】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(2) |
母の頬
あやめは、最近自分の母親が、めかしこんで出掛けていくのが度々あることを、訝しく感じていた。

最初のうちは気にならなかった。

むしろ、姉妹二人を育て上げるのに、家事に追われ、趣味らしきものも持っていないように見える母が、積極的に外に出て行くことを喜ばしく思っていた。

しかし、どうも数を重ねるうちに、あやめの中に疑惑が浮かんできた。

これといった根拠はないのだが、あやめは母が浮気をしているのではないかと思うようになっていた。

今まで、あやめにとってただ母親という印象でしかなかった母が、一人の女性として感じられることが多くなってきたからだった。



続きを読む

[テーマ:オリジナル作品 | ジャンル:小説・文学]

【2006/05/08 16:24】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) |
株価
私の毎日は、朝新聞を読むことから始まる。

多くの同業者は、昼夜逆転の不規則な生活を送るが、私は毎朝8時に起き、きちんと朝食を摂り、新聞を読む。

午前中に少し散歩をして、それからパソコンの前に向かい、昼まで仕事をする。

昼食は12時にお昼のTV番組を見ながら摂る。

昼食後、1,2時間を読書の時間に割き、それから再び夕刻まで仕事をする。

5時から始まるTVニュースを見ながら、夕食の仕度をし、6時には夕食を摂る。

それからは適当に、TVをザッピングしながら見て、気になったものはメモをしておくし、ちゃんと続けて見たいものは、あらかじめビデオに撮っておく。

そして夜のニュースを見て、お気に入りの深夜放送を見た後、1時には寝る。

締め切り前になれば、TVの時間を削り仕事をするし、逆に見たいビデオが溜まれば、仕事の時間に見ることもある。

しかし、ほとんどの場合、いつも同じスケジュールで過ごす。

妻子のいない独身だから、同居人もいない。

だから、そういった人たちに合わせて規則的になっているわけではない。

むしろ、独りでいるからこそ、ちゃんと自分を管理しないと、とんでもないルーズな生活をしてしまいそうで、そうしている。

O型の私は、基本的に大雑把で、だらしがないのだが、きちんとルールを決めて、その生活を心がけていると、意外と続くことがわかった。

しかし一旦やめると、二度と出来なくなりそうな気がする。

それが怖くて、今の生活パターンをなんとか持続させている。



その中でも、なにを措いても新聞を読むことだけは、全てにおいて最優先している。

それが私のメシの種になるからだ。

続きを読む

[テーマ:なんかヘンな物語 | ジャンル:小説・文学]

【2006/04/28 01:00】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(2) |
防疫
厚労相に勤める新井は、ある日上司の馬場から会議室に呼び出された。

「すまんね、忙しいところ。」

「いえ、とんでもない。それでお話というのは?」

「うん。実はこの度、新しい伝染病の特別対策委員会が設置されることになってね。」

「新しい伝染病?それは私、初耳なんですが。どういったものなんでしょうか?」

「君が知らんのも無理はない。何しろ世間一般ではもちろん、関係各省庁内でも今は極秘事項だ。内閣にあっても、総理と官房長官、もちろん我が省の大臣は知っておられるが。その他はうちの省内でさえ、ごく限られた者にしか知らされてないんだ。」

「そうなんですか。そうすると、それはかなり恐ろしい病気ということですね。しかも表面的にはあまり目立たない。」

「さすがだね、その通りだよ。実に表面化しづらい病気であることは確かだ。しかし、恐ろしいかどうかは実のところまだよく解ってはいない。」

「なるほど。それで悪戯に不安をあおることのないように、極秘に対策を立てているのですね。」

「まったくその通りだ。やはり君は若いが、私が見込んだだけあって頭が切れるね。」

「ありがとうございます。それでいったい私に何を?」

「まあ察しのいい君なら、既に話が読めているかと思うが。その対策委員に君を推薦したいと考えているんだ。」

「しかし、私は若いですし、そういった仕事の経験もありません。お役に立てるかどうか…」

「そんな事はもちろんよく解っとるよ。しかし誰も君に委員長をやってくれとも、一人で仕事をやってくれと言ってるわけでもない。」

「はあ。」

「委員は他にも何人か選ばれる訳だし、その中には君より経験豊富で、知識も持つものも多数いる。しかし君にはその若さが持つ行動力と判断力、頭の切れがあると私は見ている。」

「それはありがとうございます。」

「だから実質面では、他の人にサポートをしてもらいながら、君は君でその特徴を生かして事態に当たって欲しいということなんだよ。」

「わかりました。そういうことでしたら有難く引き受けさせて頂きます。」

「そうかね。まあそう言ってくれると信じていたがな。」

「しかし…」

「何だね?」

「まだ肝心のその伝染病について、お聞きしてませんが。それは一体どんなものなんでしょうか?」

「うむ」

そう言うと馬場は腕を組み、しばらく沈黙した。
どう説明したらいいか計りかねているといった様子が新井にも理解出来た。

「実は真に奇妙な病気で、いやまだ本当にそれを病気と呼んで良いものかどうかも判断つきかねている。今回の委員会の当面の議題も、まずそこら辺のしっかりした判断が話し合いの中心となるだろう。」

「と言いますと?」

「現在この病気というか症状を認識している者の間では、それを『ワライ』、もしくは『ワライ病』と呼んでいる。」

「ワライですか?と言うとそれはライ病の一種、もしくはライ病に症状が似ているのですか?」

「いや、そうじゃない。ライ病とはまったく関係がない。ワライだよワライ。英語で言えば、laugh 。お笑いのワライだ。」

「え?それではおかしい時に笑う、そのワライですか?」

「そうそのワライだよ。」

「はあ。いったいどういうことですか?」

「まあ、そういった反応も予想できたことだよ。私も上司から最初に話を聞いた時は、同じ様な反応をしたものだ。それとね、今から忠告しておくが、君がこれから取り組んでもらう仕事は、常に今の君と同じ様な反応を示す者達と向き合うことが主になるだろう。覚悟しておきたまえ。」

「はい、失礼致しました。」

「はは、いや何もそんなに恐縮することはないんだ。少し脅しが過ぎたかな。いや話がそれたが、ともかくそのワライ病については、最初に発覚した事件を語るのが解りやすいようだ。」

そして馬場は、その事件について語り始めた。




それは、ある広告代理店の企画会議中だったという。

参加者は10名ばかり。
いずれも30代から40代で、男性が7名、女性が4名。
その内の一人の女性が途中で席を外している。

その会議は、クライアントに企画を提出するために、下請の企画会社が提案する案件を検討するために開かれていた。


そして事件は会議も大詰め、最終的に一つの案件に絞る決議を採ろうとした時に起こる。


「それでは、意見も出尽した様なので、そろそろ最終的に一つの企画に絞らせていただきます。」

議長を務める代理店の企画課長が、まとめに入る。

彼は一通りみんなの顔を見回す。

その時、席にいたのは代理店の人間が彼を含め、企画部長1名(男)。
企画課社員、男女各1名。
営業部長、1名(男)。
営業部社員、1名(男)。
そして下請企画会社の人間が、アオバ企画から男女1名ずつ。
ブロードプランニング社、1名(女)。
オフィスセントラル社、1名(男)。
以上男性7名、女性3名の計10名だった。

その時議長である千葉氏は後に、
「セントラル社の土橋君ね。どうもあの時は、何か顔色悪いなって思ったんですよ。何かちょっと微妙にブルってるなって感じ?」
と語ったという。

しかし、その時はさして気にもせず議決を採る。


「それでは、まずアオバ企画さんの案から。ああもちろんアオバさんとこは二名いますが、アオバ企画さんとして一票とさせて頂きます。えーアオバ企画さんの案を推薦される方は挙手をお願いします。」

千葉氏の言葉にアオバ企画の男性を初めとして、計4名の手が挙がる。


その時。

「ははっ…」


何処かから小さく笑い声があがったことを確かに聞いた、とその場にいた全員が証言している。

みんなおかしいと思ったらしく、何組かはお互いに顔を見合わせてもいたという。

しかし微かな、小さな声ということもあって、誰も何も言わず、千葉氏もそのまま決を続ける。


「えーアオバ企画は4票ということで。次はブロードプランニングさんの案に…」
「あはは。」

今度こそは、はっきりと聞こえる声だった。

皆一斉に、声のする方向に顔を向けたからだ。

皆の視線の先には、オフィスセントラル社の土橋氏の顔があった。

土橋氏は顔面蒼白で、とても「笑顔」とは言えない表情を浮かべていた。

皆の視線を受け、ますます顔色は白さを増し、というより色が抜けていく感じだったと、隣に座っていたブロードプランニング社の女子社員は語っている。


「ええ、なんか小刻に震えちゃってて、お前は産まれたての子鹿かってぐらいに?」




議長の千葉氏は咳払いを一つして、
「セントラルさん。大切な議決の最中ですから…」

すると土橋氏は、
「あのう、今私笑ってましたか?」

「私にはそう聞こえましたがね。」

千葉氏が言うと、周りの皆も首を縦に振って肯定している。


「私にも聞こえました。」
と言ったのは土橋氏だった。


「ははっ」
とあちこちから笑いが上がったが、この笑いが「ワライ」によるものだったのかどうかは、現在調査中である。

しかしそのときは、そんな事も知らない千葉氏は土橋氏とは相対的に顔を赤らめ、
「セントラルさんふざけてる場合じゃないですよ。」

それで土橋氏はそれ以上何も言えなかったそうだが、実際に土橋氏は自分が笑っているという感覚はなく、笑い声が聞こえたという感じがした、と後に語っている。

つまり先ほどの、最初の笑い声を確かに聞いたという証言は、当の土橋氏を含めて正に全員が後に語ったことなのだった。



「もちろん、大事な会議の最中ですし、笑う場面ではない。笑おうなんてこれっぽっちも思ってなかったわけですから。自分の口から出た笑い声も何か他人事というか、すぐ近くから聞こえたといった感じでした。」



ともかく千葉氏は決議を採る。

「えー気をとりなおしまして、ブロードプランニングさんの案を推される方挙手をお願いします。」

早速ブロードプランニング社の女性を始め、これも手を挙げたのは計4名だったという。
つまり土橋氏以外の全員が手を挙げた事になる。
しかし土橋氏はもちろん自社の案の時に手を挙げるつもりだったのか、そうじゃなかったのかは確認がとれてない。

土橋氏は結局手を挙げる事はなかった。

それ所じゃなかったからだ。



「ははははははっ!」

もはや誰の目を憚る事もなく、高らかに笑い声をあげる土橋氏。
その声は印籠を出した後の水戸光門かと思うぐらいに堂々としていたという。
しかしその顔色は堂々と所か目をキョロキョロさせ、がたがたと震えている。

手を挙げた四人もそのままの姿勢で固まって、その様子を見ている。

全員が土橋氏に注目していた。

その視線にキョロキョロと目をやりながら笑い続ける土橋氏。そして口を押さえながら立ち上がる。
勢いよく立ったため、キャスター付きの椅子は土橋氏の後ろの方につーっと走っていき、壁にぶつかる酷い音がする。
しかし誰もそちらに気がいかない。
立ち上がっても口を押さえても土橋氏は笑い続けているからだ。

「土橋君、君大丈夫かね?」
やっとのことで千葉氏がそう声をかけた。

もはやその場にいる誰もが土橋氏がふざけているわけではなく、何かは解らないが異常な事態に陥っているらしいと気付いていた。


しかし異常はそれだけでは終らなかった。



「ははははははっ」
かん高い笑い声を上げ始めたのは土橋氏の隣に座っていたブロードプランニング社の女性遠藤さんだった。

遠藤さんは土橋氏と同じ様に、自分に何が起こったのか解らないといった表情で、今は土橋氏と遠藤さんの両方を交互に見つめる皆の視線を、キョロキョロと見回していた。

「ホントびっくりしましたよ。何でって感じ?もうみんなの事見つめちゃいましたよ。私笑ってる?今笑ってる?って感じでしたかね。そん時のみんなの顔は忘れませんね。『笑ってるよ、コイツ』って顔ね。でも最初は私も土橋さんにそんな顔してたんでしょうね。」



そして事態はさらに加速する。

土橋氏や遠藤さんの隣や正面に座っていた者(彼らは議席の末席、つまり議長の千葉氏とは反対の一番端に座っていた)が同じ様に笑い始め、それは放射線状に拡がっていく。

その笑いは笑っている者を見てつられたとか、面白くて笑っているわけではないという事は、彼らの顔を見ればはっきりと分かったという。

そして最終的には、千葉氏も笑い声を上げることになる。



たまたま隣の会議室で片付けをしていた清掃のおばさんは、

「いやあ、にぎやかで雰囲気がいいねえって思いましたよ、最初は。だけど掃除終わって廊下に出たら、その部屋から笑いながら男の人が飛び出してきて、笑いながらこっち見て何か言いたげにさ、苦しそうな目で訴えてくるんだよ、笑いながら。それで部屋を覗いたら、みんな笑いながら苦しそうにじたばたしてるから、こりゃ大変だって思って、とりあえず救急車を呼んだんだ。」



通常そういう事態の場合、社内ではどういう対処が為されるかは解らないが、その時のおばさんの行動は、今考えると適切であった。

10人は次々と病院に運ばれていった。





「最初は中毒症状を疑われたのではないですか?」

新井はそこまで聞いた所で、馬場に聞いた。

「その通りだよ。まあ一番最初に思いつくのは、笑い茸だな。その会議はランチも兼ねていて、その日は会社が用意した弁当を皆食べたそうだ。病院もそれに目をつけて調べた。しかし弁当にはそれらしい食物は入っておらず、10人の体内からも、そういった食物や薬物反応は出なかった。」

「そのう、テロなんてことはなかったんですかね?」

「それも考えたらしいよ。その会社がそういったものに狙われるのかどうかはともかく、可能性としてはね。笑気ガスといったものもあるわけだし。しかし、そういった成分も検出されていない。会議室からもね。」

「それじゃあ集団催眠のような状態だったとか?」

「君も色々考え付くね。もちろんそれも考えたのだろうが、それよりも何よりも先に見付かったんだよ。」

「と言いますと?」

「新種の細菌が10人の体内から見付かったんだ。これまで発見された事もない、形状も特殊なものだったから発見は比較的に簡単だったそうだ。」

「新種。まさか…」

新井は声を失う。

それほど新種の菌の発見は珍しく、恐ろしい出来事なのだ。



「それで今現在10人はどうしているんです?」

「もちろん我が省の管轄する、バイオハザードレベル3の施設内に隔離しているよ。」

「10人とも命に別状はないんですね。」

「最初に言ったように、これが命に関わるものならもっと深刻になっているだろう。場合によってはレベル4施設を使っているよ。」

「そうでした。」

「彼らは10人ともいたって健康だ。しかしワライ菌に冒され、ワライが止まらない。」

「ずっと笑い続けているんですか?」

「ずっとというわけではない。そうだね、喘息の発作に似ている所がある。しかし喘息のようにそれを抑える薬は今の所はない。彼らは一度発作が始まると、一時間以上笑い続ける。しかし、最初の会議の時からしばらくはパニック状態だったのか、笑い出すとそれこそ喘息患者のように胸をかきむしるように苦しがっていたがね。今では普通にただ声を出して笑い続けるだけ。息が苦しくなることもない。身体的には心臓やその他の臓器に負担がかかるわけでもない。血圧や脳波などバイタルサインも、それほど危惧するような乱れは起こさないんだ。」

「それでは問題はないのですか?」

「身体的にはね。」

「というとやはり、精神的に?」

「今のところ精神異常に陥った者はいないそうだ。もっともワライ菌が見つかっていなければ、全員異常者扱いだったろうがね。」

「はあ、そうでしょうね。」

「しかし発作がない時は、精神的にも何も問題はない。発作中も意識が飛んでいるわけでもないし、外的刺激にも反応する。人が話しかけてもちゃんと理解しているし、会話も出来るそうだ。もっともそれは笑いながらなので、苦労するそうだがな。」

「と言うことは、精神的にも何も影響はないということですか?」

「今の所はだよ、今の所は。しかし君、考えてもみたまえ。笑い続けるということがどういうことか。」

「どうなんでしょう。私はかえって体に良いような気もしますが。笑うことでストレスが発散されることもあるでしょう。年中怒っているよりも、精神的に安定している状態とは言えませんか?」

「それが自発的なものならね。ストレス発散に笑いが一役買うのは、それが本人が楽しい、面白いと思う気持ちが、自然に笑いを引き起こす場合によるだろう。」

「もちろんそうでしょう。」

「ところがこのワライは、体内の菌によって無理やり笑わされているのだよ。体にいいわけがない。」

「はあ、そうですか。」

「じゃあひとつ試してみようか。今から私が冗談を言うから、君、笑ってくれよ。」

「はい。」

「ワライ菌では死んでもワライきれん。」

「ははははははっ…」

「どうだね?今君はストレスを発散出来たかね?」

「いえ。」

「むしろストレスが増した感じだろう?」

「いや、それはまあ…」

「ははは、いやあ遠慮することはない。私もわざとつまらない事を言ったんだから。」

「そうですか。しかし良く解りました。面白くもないのに無理やり笑い続けることは、かえってストレスをためる事になるのですね。」

「そうなのだよ。だから今隔離されている患者達も、しだいにストレスを溜めていき、精神が蝕まれていくか、体を壊してしまうのではないかと思うのだ。」

「今現在、最初の10人以外にワライ菌による感染者は発見されているのですか?」

そう新井が聞くと、馬場は口を閉ざし、暗い顔をする。

そして、溜め息をついて、やっと口を開いた。

「今現在、全国でわかっているだけでも、300名以上の感染者が隔離施設に収容されている。」

「最初の発見から半年ですよね。」

「うむ、300という数字は確かに全国的に見ると、それほど大した数ではない。しかし、症状が症状だけに、精神病と間違えられて精神病院に収容されていたり、他人に話せない者、または本人すら自覚していない潜伏者を考えると…」

「感染手段は解っているのですか?」

「空気感染だ。」

「何ですって?まさか…」

「そうとしか考えられんのだよ。最初の会議室の件や、その他の患者達の話からみてもな。」

「という事は彼らの周囲の人々は…」

「今現在発見されている人の多くは、最初の10人からたどっていった者達なんだよ。家族や同僚とかね。しかしそれ以上は辿っていくことは無理だ。今の所は極秘に事を進めなくてはいけない。それ以上進めていくと、あっというまに騒ぎになってしまう。」

「しかしそれでは益々被害が拡がっていくのではないですか?今こうしてる間も。」

「しかし、どうしようもないのだよ。幸い空気感染とはいっても、感染力自体は極めて弱いものなのだ。現に最初の件の掃除のおばさんは感染しなかった。救急隊員も病院内でも、感染者は出なかったんだよ。」

「しかし、そうは言っても…」

「だから我々がいるのじゃないか。そのための対策委員だろ。我々が早急に対策案を出す事が、問題の解決につながるのだよ。」

「はい、わかります。しかし、どうも何処に問題があるのかがよく解らないのですが。」

「確かに最初にも言った通り、この件は非常に曖昧なのだよ。問題があるのかないのかすら解らない。さっきは私もストレスの話をしたが、それすら私の憶測でしかないわけで。もしかすると、君が言ったように逆に体にいい作用を起こすかもしれない。」

「まさか…」

「しかしね、考えてもみてくれたまえ。このままこのワライ菌がどんどん拡がっていき、国民が皆ワライ菌に冒されたとしたら。常にワライの絶えない中で、本当の笑いが解らないなんて、正に笑えない話じゃないかね。」

「そうですね。」

新井は、笑うべきか笑わないでいるのか迷ったが、そんな悩みももうしばらくの内なのかもしれない。




END





b_03.gif



banner2.gif

にほんブログ村 小説ブログへ

[テーマ:☆オリジナル小説☆ | ジャンル:小説・文学]

【2006/03/31 18:31】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) |
着道楽
ようやく残暑の陽射しも衰えて、日中でも風が肌寒さを感じさせる頃。

安西由美は久しぶりに友人の別所真知子に会うために、待ち合わせ場所の喫茶店に入る。

店内を見回すが、真知子の姿は無いので適当に座ってコーヒーを注文した。

ウェイターが湯気の立つコーヒーを持ってくるのと、自動ドアがチャイム音と共に開き、真知子が入ってくるのはほとんど同時だった。

きょろきょろと周りを見回す真知子に向かって手をあげる由美。

それに気付くと真知子は笑みを浮かべながら近付いてきた。

「お久しぶり。」

「本当ね。」

そう言って真知子は由美の向かいのイスに腰かけようとして、
「どっこいしょ。」
と思わず声が出る。

「いやあねえ。」
と由美は笑いながら言う。

「あはは。いいじゃない、誰に見られてるわけじゃないし。あなただって言うでしょ。」

真知子はウェイターから受け取ったおしぼりで手を拭きながら、臆面もなく言う。

豪快さは以前からだが、子供を産んでからは更に磊落さが増したようだ。

「あたしもホット。」

ウェイターに告げると真知子は両手で肩を抱いて、
「最近急に冷え込むようになったわね。」

「そうね。私ん家も昨日、衣替えで整理したわ。」

由美がそう言うと真知子も大きくかぶりをふって、
「うちもよ。でもこれだけはっきりしてくれると踏ん切りがつけやすいけどね。もう暑くはならないでしょ。」

「たぶんね。」
由美はスプーンでコーヒーカップの中をかきまぜながら答える。

真知子は由美を見て、
「そのワンピースいいわね。色がいいわ。」

「ありがとう。」

自分でも気に入っている一着だった。



昨日の衣替えは数年来の大がかりなものになり、ずいぶん古いものまで発掘された。

その中でもこの薄いグリーンのワンピースを見るのは何年振りだろう。

十年ぐらい前までは毎年着ていた。

流行にとらわれないデザインと、色合いが定番の一着にさせていた。




「みどりが好きなんだね。」


そう言われるまで気付かなかったけど、当時は確かにそのワンピースだけじゃなく、他の服や小物も緑色を使ったものを多く持っていた。

当時付き合っていた人にそう指摘されてからは、自分でも意識して緑色のものを集めるようになった。

「似合ってるよ。」

そう言われたのが単純に嬉しかったあの頃。



そんな感傷に浸っていた昨日を引きずって、今日のお出掛けはせっかく衣替えをしたにも関わらず、このちょっと季節に合わない服を選んでしまった。



「ちょっと寒そうだけどね。」

真知子はいつものように素直な感想を口に出す。

「うん、だからこれ。」
と隣のイスにかけておいたちょっと厚手の上着を示す。

「うちも衣替え大変だったわ。やっぱり子供が多いと駄目ね。着れなくなったものはどんどん処分しないと。最近はリサイクルショップも結構色々あるし、インターネットのオークションなんかでそんな衣類とかも売れるらしいわよ。」

真知子は専業主婦だが、以前はOLをしていたためか自宅に早くからパソコンを取り入れ、暇を見つけては触っている。

遅ればせながら最近になって由美も導入したので、ちょくちょく電話で真知子に指南を受けている。


「そうなのよね。あれって意外と役立ちそうだから、私も利用してみたいんだけどよくわかんなくて。」

「簡単よ、やり方さえ覚えたら。ただ最近はネット犯罪が多いから気を付けないといけないけどね。」

「そうね。それで躊躇してるところもあるの。」



運ばれてきたコーヒーにミルクと砂糖をたっぷり入れ、かきまぜながら真知子は言う。

「そう言えばネットで思い出したけど、このあいだ千夏ちゃんに会ったわよ。」

「そうなの?懐かしいわね。」

「あなた、あの子としばらく会ってないんだってね。」

真知子が言うと由美は少し考えるようにして、
「そうね。彼女が結婚する前だから、もう10年以上かな。」

「あらあなた、あの子の結婚式に出席してなかった?」

「ええ、ちょっと都合が合わなくて。」




杉本千夏は真知子や由美の高校の同級生だった。

由美が3年間同じクラスになったのは真知子と千夏だけ。

自然と三人は一緒に遊んだり、勉強したりと仲良く学生時代を過ごす。

卒業して別々の道に進んだ後も連絡を取り合い、たまに会っては食事をしたりした。




「彼女の家に行ったの。すごかったわよ。」

千夏は二十代の後半で結婚した。

相手は10歳年上の会社員だったが、結婚してすぐに独立しIT関連の会社を興す。

当時の波に乗り急速に会社を成長させ、長者番付けに名前を載せるほどの実業家になった。


絵に書いたようなシンデレラストーリーは悲劇に終わる。

莫大な財産を遺して千夏の夫が亡くなったのは3年前だったか。

確か交通事故だったと由美は真知子から聞かされていた。

以来千夏は再婚することもなく、相続税を納めてもまだ余生を華やかに過ごすのに余りある遺産とともに暮らしているという。




「もう部屋の数なんてよくわからないぐらいだし、使ってる家具もね、凄いのよ。あの人ああいうセンスは昔からあったわよね。」

「そうだったわね。」

確かに千夏は昔から洋服や持っているもののセンスはよかった。

高校時代は制服だったので、そうそう他人と差のつくお洒落など出来ないのだが、千夏はそれ以外の持っているもののセンスで他を圧倒していた。

「それでさ、衣装部屋っていうのがあるのよ。あのよく芸能人の豪邸とかにあるようなね。もう凄いんだから、服の数が。ずらーって並んでて、衣替えとかどうするんだろってね。いかにも庶民的な発想しちゃったわよ。そしたらね、春夏秋冬とそれぞれ部屋が別々にあるんだって。どうなってんのかしらね。」

由美は4部屋全部に衣装がくまなく置かれた様子を思い浮かべる。

「それだけあって全部着たことあるのかしら。同じ衣装なんて二度と着ることないんじゃない?」

「本当よね。それこそネットオークションに出したら、それだけで一財産だわ。」

あはは、と笑って真知子は急に顔をしかめる。

「でもね、おかしな話、偶然かもしれないけど、結婚してからも何回か彼女に会ったんだけど、いつも似たような服着てたような気がするのよね。そりゃその服自体はとってもお洒落で、彼女に似合ってるしいいんだけどね。なんか並んでる服の中にはちょっと彼女のセンスとは違う、趣味の悪いのまであったのよね。」

「へえ、珍しいわよね。彼女ってあんまり妥協するタイプじゃなかったじゃない。」

「でしょ?だからあたしもね、変だと思ってさりげなく聞いてみたのよ。これ全部着たことあるの?ってね。」

「それで?」

「そしたら彼女、ううんほとんど着たことないものばかりよ、って軽く言ったわよ。」

「え、どういうこと?」

「わたしも、え、どうしてもったいない、ってほんと庶民よねえ。そしたら彼女、何かどうしようもなく買いたくなる服があるんですって。そうすると着たくもないけど買ってしまうの、って笑いながら言ってたわ。やっぱりお金持っちゃうとどこかおかしくなっちゃうのかしら。」

「そうなのかな。」

由美は曖昧な返事をする。



「ああいうのを着道楽って言うのよね。」

耳慣れない言葉だったが、こう見えて国文科卒の真知子が言うのだから実際にある言葉なのだろう。

「私ね、ああいう風に何か一つの事に偏執的になっちゃうのは、きっと前世が関わっていると思うのよ。」

「前世?」

いきなりの突飛な発言に由美は驚かされる。

真知子はパソコンを自在に操る技術者的な面と文学少女的な面を併せ持つばかりか、こういったオカルト的なものにも造詣が深い、いわゆるマルチな人なのだった。


「そう、よく食べ物に執着する人は前世で飢え死にした人だったとか言うでしょ。そういう具合にね。」

「じゃあ彼女の前世は服がなくて凍え死んだとか?」

「ははっ、そうね。そんな感じ。」

由美は前世がどうというより、その人の生い立ちに関わりがあると考えるのが普通じゃないかと思う。

しかし千夏の場合、旦那があまりにも金持ちになりすぎて、シンデレラだの玉の輿だの言われるが、元々千夏自身が資産家の娘で、最初は逆玉だったのだ。

だから千夏の人生で服が無くて寒い思いをしたなんてことは無かっただろうし、生い立ちからくる反動では無さそうだ。

それに学生時代も持ち物のセンスは良かったが、あれもこれもと成金的に買い集める人でもなかった。




「まあ前世というのは冗談としてもね。」

真知子は少し表情を曇らせながら言う。

「彼女もさ、旦那さんの仕事が軌道にのってこれから夫婦二人でって時にあんな事になっちゃって。子供もまだだったし。あれで子供でも残してくれたらまだ、生活に張り合いがあったかもしれないけどね。」

「そうね。」

由美も真知子も、お互いの忙しいながらも充実した生活を思いながら頷いた。

「だからさ、そういう道に走っちゃったんじゃないかな。彼女再婚する気も無いようなこと言ってたし。きっと今でも旦那さんのこと愛してるのね。そういう服を買って、自分を綺麗に保とうとしてるのかもね。実際彼女、未だに綺麗だったわ。」

「そうなの。」

そんな健気なところがあったかなあ、と由美は昔の千夏を思い出していると、

「でもね、知ってた?」

と真知子が急に声のトーンを変えて言ってきたので、少しドッキリした。

「何を?」

由美が真知子に尋ねる。

「千夏の旦那さんね、まあ亡くなった人の事をあんまり言うのもなんだけど、凄く女ぐせの悪い人だったらしいのよ。」

「へえ、そうだったの?」

「まだ亡くなる前にね、千夏と会ったときにもはっきりとじゃないけど、少し愚痴みたいなこと漏したことがあったの。ほら、あの子そんなことあんまり口にしないっていうか、内に秘めるタイプだったでしょ。だからよっぽど思いつめてたのよ、彼女。」




確かにそういうところがあった。

由美は高校時代の出来事を思い出していた。

あれは確か、三年生の夏休みに入る前だったか。

珍しく恋愛に関する愚痴を千夏から聞かされた。

ただ愚痴というよりも、それは決意といったほうがいいだろう。

「あの人、音楽の趣味が合う人の方がいいんだって。そんなことでいいなら、幾らでも勉強してあげるわ。」

当時彼女が好きだった男子に、趣味を理由に他の子に乗り換えられた。

彼女は泣き崩れることもなく、苦手だったそのジャンルを必死に勉強していた。

その後、その男子を取り返せたかどうかは覚えてないが、とにかくその勝気な性格が、由美にとって千夏に対する強烈な印象として覚えている。

だから、さっきの健気な千夏というのに違和感を覚えたのだ。




「私も彼女の旦那さんを見たときは、男前だなって思ったもの。彼女、男を見るセンスもあるわって感心したんだから。まあ外見に関してだけだったわけだけどね。見た目軽いってわけじゃないんだけど。あれは女の方から寄って来るタイプね。そして来る者は拒まずって人だと思うわ。」

自分の考えだけで言い切ってしまうのが真知子の癖だった。

「だからね、そう考えたら彼女がなんか可哀想っていうか、健気っていうかさ。そんな風に思えてきちゃって。やっぱりお金が沢山あってもねえ。まあ無いよりいいかもしれないけど。」

そう言うと真知子は時計を見て、
「あら、そろそろ行かないと不味いんじゃない?」

「そうね。」

これから二人で舞台を見る予定だった。

席を立ち、さっとレシートを取る真知子に、
「ああ、払うわよ。」
と由美は言うと、
「いいからいいから、私に払わせて。チケット予約してもらったしね。」

「じゃあ、ごちそうさま。」

由美は素直に応じた。


レジでお金を払いながら真知子が
「あれっ、そういえば千夏の旦那さんって、貴方が勤めてた会社の人じゃなかったっけ?」





自動ドアが開き、外に出ながら由美は、秋風が体温を奪う前にワンピースの上にジャケットをはおる。



「本当ちょっと急に寒くなりすぎよね。」

と言う真知子に笑顔で答えながら、由美は10年以上前のことを思い出していた。




確かに女ぐせの悪い人だった。

由美と別れたのも、それが原因だった。

来る者を拒まずという真知子の指摘も当たっていた。



「千夏も苦労したんだろうな…」

思わずつぶやいてしまう。

勝気だった彼女のことだ。

着道楽は決して健気な理由からではないはずだ。

道楽とも違う。

旦那が生きてる時は、勉強の意味もあったんじゃないか。

高校時代にライバルに勝つために、必死で音楽を勉強したように。

旦那が浮気をする度に、相手のセンスを取り入れるために服を買い続ける。

でも本当は、当て付けが目的だったのかも。




―千夏に会ってみようかな。

長い間あった千夏へのわだかまりがとけた気がした。

高校時代あれだけ仲が良かったのは、やっぱり趣味が合ったから。

男の趣味も。





でも、彼女の家に行く気にはなれない。

特に衣装室には。




夏の部屋の中で揺れる、グリーンのワンピースを見る勇気はまだない。




END




b_03.gif


banner2.gif

にほんブログ村 小説ブログへ

[テーマ:自作小説 | ジャンル:小説・文学]

【2006/02/21 00:01】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ZUI
「ただいま」

安倍氏の、いつもと違う沈んだ声に、妻のフミさんは不審に思った。

「おかえりなさい。どないしました?何か悪い事でもありました?」

フミさんの顔を見るなり、安倍氏は深い溜め息をつく。

「 ありました所やないがな。ほんまに、何でワシなんや」

上着を脱がせてもらいながらも、ブツブツ言い続けている安倍氏だが、
フミさんは要領を得ない。

「何があったのか、ちゃんと説明して下さい」

そう言われて安倍氏は、やっとフミさんの顔を見据えて言った。

「あんな、今日、小野はんに呼び出された時にな、もう悪い予感はしたんや。せやけどワシ、そんな大層な実績もないし、語学も出来る訳やないから、まさか選らばれるとは思わなんだんや。せやのに…」

「せやから何ですの?」

「ワシ、遣隋使に選らばれてしもた」




続きを読む

[テーマ:ちょい笑(?)小説 | ジャンル:小説・文学]

【2006/02/19 14:28】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(5) |
自信アリ
「じゃあさ、一旦ここで休憩をとって、ついでにお昼も食べよっか」

「そうね。それがいいんじゃない。それで…」

そこで言葉を切って、亜美は、目を閉じて耳を澄ませるような、素振りをする。

文太は、地図を見ながら話していたので、亜美のそんな仕草に気付かず、

「で、ここのI.C.で、高速を降りるのが一番近いと…」

「しっ!」

亜美が文太の言葉をさえぎり、人指し指を立て、口の前にあてる。

「どうしたの?」

何となく分かっているが、一応文太は聞いてみた。

すると、亜美は目を開け、

「今、揺れたよね?」

「揺れないよ」

またか、と言った顔で、文太はつぶやいた。

「揺れたって。絶対揺れた」

「いいよ、分かったよ。揺れた、揺れた」

「何よ。信じてないでしょ」

「信じてるよ。じゃあTVつけてみるよ」

言うと、リモコンを取って文太はTVをつけ、チャンネルをNHKに合わせる。

続きを読む

[テーマ:下手な短編小説ですが・・・。 | ジャンル:小説・文学]

【2006/02/10 10:09】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(2) |
いい友
「はい、それじゃあお友達の方を…」

「えーっ!!」

彼女は観客の方に、にっこり微笑んだ。

「ありがとうございます。それでは、山田順二さんを」

テレビを見ながら、刑事部屋でラーメンをすすっていた順二は、画面の中の女優の言葉に、ぴくっと反応する。

「ありがちな名前だけど、芸能人で誰かいたっけ?」

独り言を呟いて、テレビに目を向ける。

アシスタントのアナウンサーが、コードレスフォンを女優に手渡している。

いつもなら、ゲストの隣に置いてあるモニターに、電話する相手の顔が映し出されるのだが、今日は誰の顔も出てないことに、順二は気付いた。

「おかしいな、こんなことあったっけ?」

不審な顔の順二の携帯が鳴る。

「はい、もしもし山田です」

「あ、順二くん?私。テレビ見てる?」

「は?」

耳慣れない、聞き覚えのある声。

「見てなかった?テレビつけて!お昼のあの番組よ!」

あーなんか耳がおかしい。

スマップの歌みたいな、ユニゾンってやつ?

順二はデジャブを耳で聞いたような感覚にとらわれた。

「あの、どちらさまですか?」

ようやくまず聞くべきことが聞けた順二。

「わたしよ、藤巻、藤巻愛よ」

それは確かに、画面に映る女優の名前だった。

続きを読む

[テーマ:自作小説 | ジャンル:小説・文学]

【2006/02/09 02:42】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(2) |
Preview Top
プロフィール

けん@neo

Author:けん@neo
カスガシカオを目指しながらも、日常に追われる日々を過ごす34歳。
名古屋生まれの、名古屋育ち、だが現在は関東在住。
カスガシカオに限らず、同じように自分の才能を世の中に送り出したいと考えている方たちと、交流がしたいです。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
LEGO STARWARS(224×33) 液晶モニタセット-234x60
Google



ブログランキング・にほんブログ村へ ブログ(blog)ならFC2
相互リンク.net
相互リンクをしてアクセスアップ!
アフィリエイトはここからスタート!LinkShare