VC PTN 2870485 BlogKenJr. かいじょし (4)
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作家志望であるかどうかあやしくなってきた作者が、広く世の中に認知してもらうためのあらゆる実験を行うための日記。また作家になるかどうかあやしくなってきた過程を随時報告していきます。
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かいじょし (4)
かいじょし(1) (2) (3)を読んでいない方はこちら。



「山さん、それじゃあ。」

順二に向かって無言で頷く山さん。順二は勢いよく部屋から飛び出していった。

「皆さん。どうやら署までご同行していただく必要はなくなりそうです。」

山さんは大作達に向かってそう告げた。

「どういうことですかい?」

聞き返したのは江原だった。

「それは、皆さんお揃いになってからお話します。」

山さんがそう答えると、それ以上誰も、何も聞くことはなかった。





しばらくして、鑑識係や、ほかの捜査員らが応接室に集合した。

介護士の尾藤も、再び呼び出されていた。

順二も既に山さんの隣に戻って来ている。

手には先ほどの辞書をまだ持っていた。

山さんは一通り部屋の中にいる人々を見渡した後、おもむろに口を開いた。

「皆さん、お待たせしました。それではこれから秋山氏殺害事件の真相をお話したいと思います。」




突然の山さんの発言に、一同はざわめき立つ。

「それは、犯人が分かったということですかい?」

江原が尋ねる。

「ええ、それも含めて順序だてて説明させて頂きますので、しばらく話をお聞き願いたい。」

山さんの言葉に、一同は口を閉ざすしかなかった。


「それではお話させていただく前に、確認したいことがあるのですが。
合鍵の調べは済んだかね?」

山さんは鑑識係に向かって聞いた。年配の方の鑑識係が、山さんに書類を差し出す。

山さんはそれを見ながら、

「文香さん、もう一度確認しますが、この家の合鍵の置き場所を知っているのは、あなたと、尾藤さん、千鶴さん、大作さん、そして江原さんの五人だけですね?」

「ええ、そうです。」

文香がそう答えると、山さんは鑑識係に向かって、

「合鍵に残っていた指紋は?」

「その書類に書かれている通りです。」

「わかった。それでは千鶴さんにお聞きします。あなたが最後にこの合
鍵をお使いになったのはいつですか?」

聞かれた千鶴は、首を横に振りながら、

 「この家に来たのだって数年振りなのに、そんなこと覚えてません。」

「まあそうでしょうなあ。そうすると、合鍵に指紋は残ってないでしょうね。」

「そんなこと分かりません。指紋がどれくらいの間残ってるものなのかなんて知りませんから。」

「なるほど、当然ですね。それでは大作さん。あなたはどうですか?最
後に合鍵を使った時を覚えてますか?」

山さんに聞かれて、大作はためらいがちにちらりと千鶴の方を見て答える。

「ええ、それはもちろん覚えていますよ、昨日の晩にこの家に入る時に使いましたから。」

それを聞いて千鶴が大作を睨みつける。


「家を出るときには使わなかったのですか?」
 
「ええ、出るときは彼女が閉めてくれますから。」

大作は文香を見ながら答えた。

「そうしますと、合鍵に指紋は?」

「付いているでしょうね。でもそんなことで…」

食い下がる大作を手で制して、山さんは話を続ける。

「ところがですね、合鍵にはまったく指紋が残されておらんのです。こ
れは犯人が指紋から割り出せるような身近な人物であり、なおかつ合鍵の場所は知っているが、普段は滅多に使わない人であることを示しています。何故なら、普段合鍵をよく使う人物なら、指紋が残っていたとしても不自然ではないので、わざわざ拭き取る必要がないからです。」

山さんの説明に一同は、一様に頷いている。

「それでは尾藤さん。同じ質問をします。あなたが合鍵を最後に使ったのはいつですか?」

「ぼ、僕が使ったのは、いつだか覚えてません。」

尾藤は山さんの質問に弱々しく答える。山さんは尾藤の答えに意外そう
な顔をして、再び尋ねる。

「ほう、合鍵はもともとあなたがこの家に入り易くするためのものだとお聞きしましたが?」

「ええ、確かにそうなんですが。普段僕が来る時間には、文香さんが既に起きていて、家の鍵は開いているのです。だから、合鍵を使うことは滅多にありません。」

尾藤の答えを聞いた大作は、顔色を変えて彼に掴み掛かった。

「お前か!お前が親父を殺したのか?そうか、刑事さんがさっきから言っていた「かいじょし」っていうのもお前のことだったんだな!」

「落ち着いて下さい、大作さん!結論を急がれては困ります。それに
「かいじょし」というのはあなたにも当てはまるのですから。」

順二と二人がかりで尾藤から大作を引き剥がしながら、山さんはそう告
げる。

大作は尾藤からは離れるが、なおも納得がいかないといった様子で、山さんに食ってかかる。

「だからいい加減にその「かいじょし」って言葉を説明して下さいよ。何なんですかいったい?」

山さんは努めて冷静に話を続ける。

「いいですか。もう一度言いますが、そのことも含めて順番に説明して
いきますから。どうか他の皆さんも冷静に話をお聞きください。」

山さんは大作に向けてだけでなく、皆の顔を一人一人見回しながら言った。

そして今度は江原に向い、

「それでは江原さんにも同じ質問をします。あなたが最後に合鍵を使ったのはいつですか?」

「わしは合鍵を使ったことは一度もないのだよ。」

「何ですって?」

思わず山さんは聞き返す。

「合鍵の場所を教えてもらってはいたが、わしがこの家を訪れるときは、いつも昼間だからな。文香くんがいるから鍵は開いているし、合鍵を使う機会がなかったよ。」

「それは本当ですか?」

山さんが念を押す。

「間違いないよ。」

江原が頷く。

「分かりました。これではっきりしました。犯人は江原さんあなたですね。」

山さんは驚くほどあっさりそう告げた。

「な、何を言っているのかい?わしは合鍵を使ったことは一度も無いと言っとるじゃないかい。合鍵にわしの指紋はついてなかったんじゃないのかい?」

興奮気味に一気にまくし立てる江原の一言一言に頷きながら、山さんは落ち着いて聞いている。

そしてゆっくりと口を開いた。

「はい、確かにあなたの指紋は合鍵に残っていませんでした。」

「じゃあ、なんで?」

なおも食い下がろうとする江原を手で制して、再び山さんは一同に向かって、

「ここで皆さんにはお詫びしておかなければいけません。実は私は嘘を一つついていました。」

山さんの思いがけない言葉にまたも一同はざわめき立つ。


そんな皆の動揺を気にも留めず、山さんは続ける。

「先ほど合鍵には指紋が全くついていないと言いましたが、本当はちゃんとあなた方の指紋がついていました。文香さん、大作さんそして尾藤さんのものもありました。」

「なんでそんな嘘を?」

大作が怒っているとも、笑っているともわからない複雑な表情で聞いた。」

「文香さんの昨晩は物音を聞かなかったという証言と、強引な進入の形跡のないことから、まず犯人は合鍵のありかを知っているあなたがた5人で間違いないと考えました。」

「彼女が嘘をついているのじゃないかい?」

江原があごで文香を指しながら言う。

「なるほど確かに昨晩一緒にいたという大作さんと口裏を合わせれば、彼女らにも犯行が可能です。というより彼女らが一番疑わしい容疑者になります。」

「じゃあなんで?」

そう聞いたのは大作だった。

「果たしてもしあなたがたが犯人だとしたら、わざわざ疑われるために合鍵を使うような状況にするでしょうか?他の3人はともかく、あなた達2人はこの家に最初からいるはずの人なのです。」

「どういうことですか?」

文香が首を傾げながら訪ねる。

山さんは文香に向かって、

「あなたがもし犯人なら、物取りを装った犯行にも見せかけられるということです。窓を割ったり部屋をあらすなどの偽装をして、警察には怪しい人影を見たとでも言えば自分達に疑いはかからないと考えるのが普通でしょう。何故わざわざ物音はしなかったなどと言ったのですか?」

「そ、それは……」

文香は言いよどむが、山さんは表情を緩めて言った。

「何故ならそれが事実だからです。そうですね?」

文香がこくりと頷く。

「それでは、尾藤さん、千鶴さん、江原さんが犯人だとしたら、犯行を物取りと見せかけることができたでしょうか?」

山さんは3人の顔を交互に見ながら言う。

3人は頷くことも首を横に振ることも出来ずに固まっている。

「出来ないはずです。何故なら3人とも少なくとも文香さんが家にいることは知っていますから、偽装しようと派手な音を立てれば、彼女に気付かれ犯行そのものが出来なくなるからです。」

「それじゃあ、その介護士の子が合鍵を使って殺したのよ、指紋が残っていたのでしょ?」

千鶴は自分が疑われることに耐え切れずに叫ぶように言った。

「ところが先ほど指紋の話を伺ったときに、尾藤さんはいつ使ったか覚えていないと曖昧な返事をされました。突発的な犯行の凶器ならまだしも、冷静に合鍵を使う犯人が合鍵に指紋を残し、またそれがいつつけたものか分からないなどと、わざわざ疑われるような言い方をするでしょうか。私が犯人なら指紋を残さないか、また指紋を残していても不思議ではない証言をしますね。」

「だからと言って彼が犯人で無いとは言えないのじゃないかい?」

「しかし彼にはアリバイがあるのです。そして千鶴さんも同じ理由で犯人とは考えにくい。指紋に対して曖昧な答えをしたからです。」

江原の顔がどんどん紅潮していく。

「それでわしが犯人だというのかい?」

「合鍵のありかを知っていて、指紋が残っておらず、そしてそのことを自信を持って答えることが出来たのはあなただけです。つまりあなたは指紋が残らないように拭き取るなり手袋をするなりしていたからです。他の人の指紋が鍵に残っていたと言うことは、手袋をしていたのですかな?」

山さんはあくまで冷静に答える。

江原は突然笑い出す。

「は、ははは。しかしそれはあくまでわしらしか鍵のありかを知らなかったことが前提じゃないのかい?もしかしたら他に知っているものがいたかもしれんし、泥棒に入ったものがたまたま合鍵を見つけたのかもしれんぞ。だいたいそんなものだけでわしが犯人という証拠になるのかい?」

「なるほどそういう可能性もあるかもしれませんが、まず第三者ということはないでしょう。何故ならこれがあるからです。」

そういうと山さんは皆の前に紙切れを一枚掲げて見せた。

そこには「かいじょし」と平仮名で書かれていた。



つづく



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【2006/07/30 17:33】 | 小説 「かいじょし」 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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作家を目指しながらも、日常に追われる日々を過ごす37歳。
名古屋生まれの、名古屋育ち、だが現在は関東在住。
作家に限らず、同じように自分の才能を世の中に送り出したいと考えている方たちと、交流がしたいです。
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