VC PTN 2870485 BlogKenJr. かいじょし (3)
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作家志望であるかどうかあやしくなってきた作者が、広く世の中に認知してもらうためのあらゆる実験を行うための日記。また作家になるかどうかあやしくなってきた過程を随時報告していきます。
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かいじょし (3)
かいじょし(1)、 (2)を読んでいない方はこちらへどうぞ。



「どうなってるの?呼び出しといて返事もないなんて。」

どうやら秋山氏の元愛人の千鶴らしいと、山さんは気づいて言った。

「千鶴さんですか?わざわざご足労かけまして。」

山さんが丁寧に応対する。しかし千鶴は状況が掴めず、山さんに対して、「何者?」といった表情を向けている。

「私は県警本部の山田です。」

山さんは警察手帳を示しながら告げる。

「刑事さん?いったいどういうことですの?」

ますますわけが分からないという具合に、ほとんど叫ぶようにして千鶴は聞いた。

「実は大変申し上げにくいのですが、秋山さんが亡くなりまして。」

「えっ?殺されたんですか?」

千鶴の言葉に、山さんは「おやっ?」という顔をして、

「どうして殺されたと思ったのですか?私は亡くなったと言っただけで
すが?」

「だって、警察の方がいるってことは、そういうことなんじゃないですか?」

そう言いながら千鶴は、はっと気づいたように、

「まさかそれで私を疑ってここに呼び出したんですか?」



食ってかかる千鶴に、落ち着いて山さんは、

「いえ一応関係者全員にお集まり頂いているだけですが。」

「私はもう関係ございません。」

そこで大作が山さんの袖を引っぱる。

「あのう、こちらは何方で?」

「大作さんは千鶴さんをご存じないのですか?」

そう言いながら山さんは大作と千鶴の顔を交互に見る。

「ええ、初めて見る方ですが。父の知り合いのかたですか?」

「ああ、ええそうですか、困りましたなあ。」

山さんが頭を掻いていると、若い刑事が一人、応接室に入ってきて、山
さんの耳元で何か囁く。すると山さんは顔色を変えて、

「何、本当か?」

そして、大作に向かって、

「大作さん。少し改めてお話を伺うことになりそうですなあ。」

「どういうことです?」

「大作さん。私たちの質問には正直に答えていただかないと、いらぬ疑
いをかけられることになりますよ。」

「何のことですか?」

明らかに大作は動揺している。

「昨晩は本当にずっと自宅の方にいらしたのでしたね?」

「そう言った筈ですが。」

「それはおかしいですね。今、向かいの家に聞き込みに行った者の報告
では、そこの奥さんが、今朝の8時ごろ、あなたがこの家から出て行くのを見たと言っている。どういうことですか?」

「いや、あの、その…」

大作の顔から汗が噴き出してくる。

「あなた、向かいの奥さんと面識は?」

「ええ、それは、挨拶を交わすこともありますので知っていますけ
ど。」

「それでは、その奥さんが見間違えることもないでしょうな。」

「ええ、それは、その…」

「大作さん。何もこのことだけであなたを犯人扱いしようってわけじゃ
ないんです。ただ、これ以上本当のことを隠されるようですと、署までご同行願うことになりますよ。」

大作は目も当てられないほどうろたえて、文香の方をちらりと見る。文香はその視線を受けようとはせず、下を向いてしまう。

「どうなんですか?」

なおも問い詰める山さん。堪りかねて大作は語りだした。

「実は、確かに昨晩から今朝にかけて、この家にいました。でも私は親父を殺してなんかいない。本当なんです。信じて下さい。」

それを聞いて山さんは、少し表情を和らげ、

「大作さん。昨晩何があったのか説明して下さい。どうしてこの家にい
たのですか?」

そこでまた大作は、文香に目をやる。

「そのう、私は彼女に会いに来たんです。文香さんに。」

「はあ、と言いますと?」

「ですから、私と文香さんは付き合っているんですよ。それで、尾藤君
が帰った後に、こっそり会っていたんです。昨日も。」

山さんは文香に向かって、

「本当ですか、文香さん?」

文香はなおも下を向いていたが、やがて下を向いたまま、コクンと小さ
く頷いた。



「何てことなの!」

そう叫んだのは千鶴だった。

「あなた本当なのそれは?」

千鶴は文香の肩を揺さぶりながら、問いただす。

「ちょっと、千鶴さん、落ち着いて下さい。どうしたんですか?」

山さんの声も耳に入らず、なおも文香を揺さぶり続ける千鶴。

「あなた、それがどういうことだか分かっているの?」

「千鶴さん、落ち着いて下さい。」

ようやく文香から千鶴を引き剥がした山さんは、再び彼女に尋ねる。

「どういうことか説明ねがいませんかね?」

千鶴は落ち着きを取り戻し、表情は冷静だったが、声は震えていた。

「この娘は私の娘なんです。」

「え?」

山さんは思わず聞き返す。

「私と秋山との間に出来た娘、つまりこの大作さんとは腹違いの兄妹なんです。」

一同は声を失う。

そこに順二が、

「うわー、メイドに加えて妹ってか。」

と間抜けな声を出す。

順二の頭を張り倒して、山さんは言った。

「それは本当なんですか?」

「こんなことで嘘なんか言いません。この娘は本当に私と秋山との子供
です。」

そう言うと千鶴は、うつむいて話を続けた。

「秋山と別れて、私はこの娘を一人で育てていました。しかし、この娘
が父親を知りたがって。仕方が無かったので、当時は既に本妻さんも亡くなっていたこともあり、一度だけと思って秋山に引き合わせたんです。」

そこで千鶴は顔をあげて、

「秋山は素直に喜んでくれました。そして私達二人と一緒に、三人で暮
らすようにとも言ってくれました。けど私は既に秋山への愛情は失って
いましたし、自分一人で生きていく力もつけていました。だから断ったんです。」

千鶴はひとつ深いため息をつき、文香の方を見て、なおも続ける。

「ところがこの娘は、秋山の側にいてあげたいと。当時、秋山は脳溢血から立ち直って、リハビリをしている最中でした。母親の私は一人でも大丈夫だけど、秋山は自分が側にいてあげないと、と言って彼と一緒に住むことを望んだんです。奥さんもいなくなって、息子さんもいないのならと、私は秋山に頭を下げました。」

千鶴はハンカチを取り出し、涙を拭う。

「秋山は逆に自分からよろしくと。頑固な彼が素直に頭を下げたのを見て、私もこれでよかったと思っていたんです。それなのに、まさかこんな事になってるだなんて。」

そう言って千鶴は、キッと大作を睨みつける。当の大作は、

「そんな、まさかそんな…」

とぶつぶつ呟いている。山さんは文香に向かって、

「あなたは知ってらしたんですな。」

「ええ、知っていました。でも、どうしても自分を止めることが出来な
かったのです。」

「くー!」

と、また奇声を発する順二を小突いて、山さんは言った。

「分かりました。それで昨晩は二人で一緒にいたと。」

頷きながら、山さんはまた険しい表情になり、

「それでまさか二人で共謀して、秋山さんを殺害したのではないでしょ
うな?」

「とんでもない。さっきから言っているでしょう。何の理由があって親
父を殺さなくちゃいけないんです。」

「あなたに理由が無くても、彼女に理由が有るかもしれない。彼女にそ
そのかされて、やったんじゃないですか?」

「何を言ってるの、さっき言ったでしょ。この娘は秋山を介護するためにこの家に住み込んだのよ。そんな健気な娘が、何だって人殺しなんかしなくちゃいけないのよ!」

と千鶴が叫ぶ。

「そうですよ。彼女はそんな娘じゃない。」

と大作も応じる。

「失礼ですが、秋山さんは彼女を認知してたのですか?」

「ええ、それはしてくれましたけど。」

「そうすると、秋山さんの遺産を引き継ぐ権利が、文香さんにはおあり
ですなあ。」

「刑事さん!」

千鶴と大作が同時に絶叫する。

「いい加減にしてください!」

大作は、山さんにくってかからんばかりに訴える。文香はその場に泣き
崩れてしまう。

順次は大作、千鶴、山さんの顔を交互に見回しながら、おろおろしている。

そこで、再び若い刑事が山さんに囁く。頷いて山さんは、

「千鶴さん、ちょっとあなたの会社を調べさせてもらいましたが、どうやら経営がうまくいっておられないようですなあ。あなたにも動機があったようだ。娘さんと共謀していたのは、あなたの方でしたか?それとも三人で?」

「お母さんはそんな人じゃありません!」

泣き崩れていた文香が、顔を上げて叫ぶ。

「何だってわざわざ甲府から出てきて、殺人犯に祭り上げられなくちゃ
ならないの!」

娘同様、千鶴も叫んだ。

「甲府ですって?あなたは甲府からいらしたのですか?」

「ええ、私は元々甲府の生まれで、秋山と別れてから地元に戻って事業を始めたんです。それも順調に業績を上げて、人に頼らず生きていくだけの力はあるんです。今はたまたま苦しい時期ですが、だからといって人を殺すだなんて。」

「そうですか、甲府ねえ。」

山さんが言いながら、考え込む様に右の手のひらで、顔を覆った。

「どうかしましたか?」

順二が疑問に思って、山さんに尋ねる。

「ああ、いや、なんでもない。いや、しかし…」

何やら、言いあぐねている様子に、順二は不自然さを感じて言った。

「山さんらしくないですね。言いたいことがあるならはっきり言ったら
いいじゃないですか。」

山さんが明らかに動揺しているのが見て取れて、順二はいつに無く強気だ。

そんな順二の態度に、山さんも気が障ったらしく、いつもの口調に戻って言った。

「甲府と言えば甲斐だろ。だから甲斐女子だよ。」

「山さん、本気ですか?」

「お前に言われたくはない!」

気を取り直して山さんは、三人の方に向き直り、

「とにかく、あなたたちには三人ともに動機があり、しかも三人ともに
「かいじょし」という言葉にも当てはまっていらっしゃる。容疑者とは言わないまでも、署にご同行いただいて、お話を伺うことになりそうですな。」

「何回言ったら気が済むんだ!動機なんて無いって言っているだろう
が!大体さっきからかいじょしってのはなんなんだ?」

山さんに掴みかからん勢いで、大作が叫ぶ。

「この人はどうだか知らないけど、私たち二人は、秋山を殺す気なんてないです。」

「そんな、お母さん酷いですよ。僕だって親父を殺す気なんて無いです
よ。」

「あなたにお母さんなんて呼ばれる筋合いはありません!」

「お母さん!大作さんはそんな人じゃないわ!」

三者三様に叫び声を上げるのを、山さんはため息混じりに見ながら言った。

「困りましたなあ。皆さん少し落ち着いて下さい。」

興奮させているのはあんただろ、とは言えない順二。

そこで、応接室のドアが開き、一人の初老の男が入ってきた。

「おうい、誰もおらんのかい?」



皆が一斉に声の方向に目を向ける。

「何だ、おるじゃないかい。」

そう言いながら男はつかつかと入ってきた。そして千鶴を見て、

「ありゃ、あんた千鶴さんじゃないかい?久しぶりだねえ。元気にしとったかい。」

男は千鶴の隣いる山さんに気づき、

「お宅はどちらさんでしたかい?」

「江原さんですね?私、県警の山田と申します。」

江原は目を丸くして、

「おや、刑事さんかい?いったいどうしたんですかい?」

「実はですね、秋山氏が亡くなられまして。」

山さんの言葉に、江原はなおも大きく目を見開いて、

「何ですと。そりゃ、大事ですなあ。それで私が呼び出されたんですかい?」

「ええ、まあそうです。ずいぶん落ち着いてらっしゃいますね。」

山さんは江原の態度に不自然さを感じてそう言った。

「ああ、まああいつも年は若いが体がだいぶ壊れておったんで、遠から
ずこんなことになるとは思っておりました。」

「そうですか。しかし、秋山さんは自然死ではないんです。」
「どういうことですかい?」

順二はさっきまで山さんが見ていた辞書のページをパラパラとめくり始める。

「秋山さんは殺されたんですよ。」

「まさか、あいつは人から恨みを買うような人間じゃないよ。殺された
なんて信じられん。」

「そう言いましても、実際殺されたのは確かです。しかし、弱りましたなあ。江原さん、あなたには秋山さんの交友関係から、何か聞きだせることはないかとお呼びしたのですが。そうですか、人から恨まれるようなことはなかったんですね?」

「あれは、気難しい性格で、もともと人付き合い自体をあまり好まないやつだった。恨みを買うほどの深い付き合いをしていた人間はおらんかったよ。」

「しかしあなたとはそんなことはなかったのでしょう?共同で会社を経営なさっていたぐらいですから。やはり深い関係だったのでは?」
山さんの言葉に、江原は深く頷いて、

「秋山とは腐れ縁でしてな。郷が一緒で、同じ大学の国文学科を卒業してからは、あいつは研究者、わしは出版業界に入って道が別れたと思ったのだが。結局わしが独立して会社、といっても小さなものですが、それを立ち上げるときに、資金の援助と出版物の監修をたのんだんだよ。」

「資金の援助ですか?そうすると江原さんは最初、共同経営を望んでいたわけではないのですね?」

「ああ、まあそういうことになるかなあ。」

江原はあいまいに答える。

「共同経営を持ち出したのは、秋山さんの方からなんですね?」

「まあそれはそうなんですが、わしもなにも、秋山に対して金は出すけど口は出すなと言ったわけではないんだよ。当時、やつは既に国文学者として名を成し、多忙な日々を送っておった。だからわしは気を使って敢えて経営のことは口にしなっかたんだ。経営なんて手のかかることはやりたがらんとも思ったしな。」

「ところがあなたの意に反して、秋山氏は自分も経営に関わることを望んだのですな。」

「あの時はありがたいと思ったんだが、今考えるとやめておけばよかったのかもしれん。結局その後も秋山は、本業と会社経営でますます走り回ることになりおった。あの脳溢血もそれが引き起こしたと言ってもいいぐらいですからなあ。」

「病気で倒れられた後も、経営に参加していらしたのですか?」
「ええ、もちろん実務的なことはできませんから、ほとんどオブザーバーのようなもんでした。」

辞書をめくっていた順二の手が、あるページでふと止まる。

「それで江原さん。失礼ですが、その会社の経営状態はいかがですか?」

「刑事さん、どうもさっきから聞いていると、私のことを疑っているんですかい?」

順二は開いたページを凝視している。

「いえいえ、どの方にも一通りお話を伺うのが我々の仕事ですから。そうですよね、皆さん?」

そう言って山さんは、大作達三人の方に向かって言った。

三人は既にすっかり毒気を抜かれたように、ぼんやりと山さんと江原のやり取りを聞いていたので、山さんの挑発めいた言葉にも、反応は薄かった。

山さんは拍子抜けしたという表情を浮かべながら、江原の方に向き直り、

「それで江原さん、昨晩はどちらに?」

「昨日の晩は、事務所にこもって書類の処理をしとったよ。」

「どなたかとご一緒で?」

決まり文句を言う山さんの後ろに順二が回りこむ。

「一人だったからな。証明はできんよ。しかし、馬鹿馬鹿しい。何だってわしが秋山を殺さなくちゃいかんのかい?」

山さんはちらりと大作達を見て、

「皆さんそうおっしゃいます。そうしますと江原さんにも署で詳しくお話をお聞かせ願いましょうか。」



順二が山さんの袖を引っ張る。山さんはそれを無視して、

「おい、車の用意をしておけ!」

と若い刑事に命じる。

「山さん、山さん、これ、見てくださいよ!」

無視し続ける山さんにしびれを切らして、順二は声を上げた。

「何なんだいったい。」

言いながら順二から差し出された辞書を見て、山さんの動きが止まる。


「これは。そうか、なるほど、そういう事か。」

そして、順二に向かって、

「順二、車の用意をストップさせろ。それから全捜査員と関係者をこの部屋に集めろ。」




つづく


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【2006/07/18 18:54】 | 小説 「かいじょし」 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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Author:けん@neo
作家を目指しながらも、日常に追われる日々を過ごす37歳。
名古屋生まれの、名古屋育ち、だが現在は関東在住。
作家に限らず、同じように自分の才能を世の中に送り出したいと考えている方たちと、交流がしたいです。
YouTubeにTwitterもやってます。

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