VC PTN 2870485 BlogKenJr. かいじょし (1)
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作家志望であるかどうかあやしくなってきた作者が、広く世の中に認知してもらうためのあらゆる実験を行うための日記。また作家になるかどうかあやしくなってきた過程を随時報告していきます。
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かいじょし (1)
国語学者であり、資産家の秋山氏が、自宅で殺されていた。

W山田刑事は早速秋山氏宅に急行する。

現場検証をする鑑識係が報告する。

「どうやらダイイングメッセージらしきものがあるのですが。」

「ダイイングメッセージとはまた時代がかってるねえ。さすがは国語学者さんだ。」

と山さんが言うと、

「山さん、仏さんに失礼ですよ。」

と山田刑事がたしなめる。

「どれ、どんなんだい?」

山田刑事を無視して山さんが聞くと、鑑識係は一枚のしわくちゃになったメモ用紙を差し出す。

「ガイ者が握り締めていました。死後硬直が始まっていたので開けるのに苦労しましたよ。」

「どっちの手で握っていた?」

「左手です。」

鑑識係が答える。

「ガイ者はどっち利きだ?」

重ねて山さんが聞いた。

「ええまだ判りません。」

鑑識係がそう答えると、山さんは山田刑事に向かって、

「順二!ちょっと関係者にあたってこい!」

「え?」

「とっとと行ってこい!」

「は、はい。」

順二が部屋から飛び出して行くのを見て、

「おそらく右利きであったと思われます。」

別の若い鑑識係が恐る恐る山さんに進言する。

「どうしてそう思う?」

山さんはじろっとその鑑識係を睨んで聞く。

「はい、あの、おそらく、そのメモを書いたペンが、ガイ者の右手近く
に転がっていたからです。」

ガチガチになりながらも、何とか言いたいことを伝える。

「なるほどな。そうすると、少なくとも見た目に不自然なところはないな。」

「どういうことですか?」

年配の方の鑑識係が尋ねる。

「これが右手に握らされていたとしたら、ちょっと不自然だったということだよ。」

「なるほど。犯人に握らされていたかもしれないと。」

「左手でメモを押さえながら、右手にペンを持って書いたなら、そのまま左手に握るのが自然なんじゃないかね。息も絶え絶えならなおさらな。」

 山さんが一通り自分の考えを話し終えたところで、順二が部屋に戻ってくる。

「警部、やっぱりガイ者は右利きだったそうです。でも、なんで…」

報告に続いて疑問を問い正そうとする順二を、またも無視して山さんはメモの文字に目を落とす。


「かいじょし」
とひらがなで書かれている。

「どういう意味だこりゃ?」

つぶやく山さんに、順二が答える。

「介助士って意味ですかね?」

「そんな言葉あるのか?」

「わかりませんけど、秋山氏は介護を受けてましたから。」

「それを早く言え!で、その介護士だか介助士だかはいるのか?」

「はい、呼んできます。」

そう言って再び順二は部屋を飛び出していく。

「まったく、使えねえ。」

それを見送って山さんはつぶやいた。



「で、死因はなんだい?」

「首を絞められていますねえ。紐というよりも、もっと幅の広いものです。ベルトとか帯とか。」

年配の鑑識係が答える。

「ふん。時間は?」

「昨夜11時から12時の間ですね。おそらく寝込みを襲われたんじゃないですか?」

若い方の鑑識係が答えると、

「そりゃおかしいだろ。だったらどうやってメモを残せたんだ?」

と山さんは不審な顔で言った。

「それもそうですね。」

「撲殺だったら殴られてからしばらくして死ぬってのも有り得るが、絞殺じゃ死んだらそのままだろ。息を吹き返して、また死んじまうってことはないんじゃないかい?」

「確かに考えにくいですね。」

「そうなると、ガイ者は犯人が現れたとき、起きていたってことだ。それで身の危険を感じて、メモを書いた。そしてそれを握り締めたまま殺された。」

「犯人はメモに気づかなかったんですかね?」

「わからんように書いたのか。しかし、ペンは手元に転がっていたのだろう?」

「はい。」

「そうすると、やはり犯人がわざと握らせた可能性も捨てきれん。とにかく筆跡を鑑定して、ガイ者が書いたものかどうか確かめてくれ。」

「わかりました。」

と答えて若い鑑識係が出て行くのと入れ替えに、順二が介護士の尾藤を連れて入ってきた。

「彼が介護士の尾藤さんです。彼が死体の第一発見者です。」

「尾藤さん。いくつかお伺いしたいのですが、まず発見した時の事をお聞かせ下さい。」

山さんに聞かれて尾藤は思い出すようにしながら答える。

「はい。今朝、僕はいつものように9時にここに着きまして、部屋に入ったら秋山氏が、ベッドの下でうつ伏せに倒れているのが見えました。急いで駆け寄って脈を診たりしたのですが、既に亡くなって何時間か経っているのがわかったので、急いで警察に連絡しました。」
 
「ほう?何故病院ではなく、警察へ?」

「何故と言われても困るのですが。秋山さんはもう亡くなっていたんで病院ではないなと。でもまさか殺されているとは思わなかったです。」

「殺さされているといつ知ったのですか?」

山さんがギラリと目を光らせて尾藤の顔を見る。

「さっきその刑事さんに呼ばれた時ですけど。」

尾藤の言葉に山さんは、順二の顔を目殺するかのごとく睨みつける。順二はしまったという表情を浮かべて、首をすくめた。

「わかりました。それで昨日はこの家に来てましたか?」

「ええ、ここには毎日来ています。いつも9時から夜の9時までいます。」

「それはずいぶん重労働ですね。」

「ええ、普通は介護士はそこまで長い間付きっきりにはならないのですが、僕の場合は秋山さんの専属ということで。まあ、その分結構な額を貰ってますし。」

「そうですか。それで昨晩も9時にこの家を出たのですね?」

「はい。」

「その後、戻ってきたということはありませんか?」

 山さんの言葉に尾藤は顔色を変えた。

「それはつまり、僕を疑っているということですか?」

山さんは慌てる風もなく答える。

「いえいえ、これは皆さんにお伺いすることですから。よろしかったら9時以降の行動もお聞かせ願いませんか?」

「はあ。僕は自宅から電車で通ってるんで、昨日も駅まで歩いて、9時半の電車に乗りました。それで自宅近くの駅で降りて、ああ、それが9時50分くらいです。それで駅前のコンビニでちょっとした買い物をして、家に着いたのが10時ぐらいだったと思います。それから風呂に入って寝ました。」

「尾藤さんは一人暮らしですか?」

「いえ、両親と妹が一緒です。」

「失礼ですけど、確認を取らせていただきたいので電話番号を。今、ご自宅にはどなたか?」

「ええ、いいですよ。母がいると思います。」

「わかりました。順二!」

呼ばれた順二は尾藤から番号を聞いてメモし、部屋を出て行った。

「そのう、僕は秋山さんから、かなりたくさん手当も頂いていたし、彼が亡くなったら職が無くなってしまいます。僕が秋山さんを殺す理由なんて無いですよ。」

「我々もそう思いますが、可能性を一つ一つ潰していくのが我々の仕事なんです。勘弁してください。」

「はあ。」



しばらくして順二が戻ってくる。山さんの耳元で囁く。山さんは頷いて、

「尾藤さん、お母さんと連絡がとれましたよ。大変ご迷惑をおかけしました。これに懲りずにまた何かありましたら、ご協力お願いします。」

「ええ、もちろんです。僕も犯人が恨めしいですよ。僕の職を奪って。秋山さんは気難しくて、しょっちゅう怒鳴られましたけど、良くして貰ってましたから。」

「はい、早急に事件解決できるよう努力します。」

「それじゃあ、失礼します。」

そういって、部屋から出て行こうとする尾藤に、山さんが、

「ああ、最後に一つだけ。よろしいですか?」

と今思い出したようにたずねる。

しかしそれは山さんが、事件について重要視しているポイントを質問するときのパターンだということが、最近順二にもわかってきた。




 「ええ、なんです?」尾藤が振り返って聞き返した。

 「あなたが9時頃ここを出るときは、いつも秋山さんはもう寝てますか?」

 「ええ、そうですね。たいていは。」

 「それじゃあ部屋の電気はどうです?」

 「はい、大抵僕が消して出て行きます。」

 「今朝入った時、電気はどうでした?」

 「消えてましたね。」

 「そうですか。あと秋山さんはどれくらいのレベルの要介護人だったんですか?」

 「刑事さん、よく知っていますねえ。レベルだなんて。」

 「まあ、いつ自分も、そうなるかわからんからね。ちょっとは勉強してますよ。」

 そう山さんが言うと、尾藤は笑って、

 「やだなあ、まだまだお元気そうですよ。秋山さんは数年前に一度、
脳溢血で倒れちゃって。それ以来寝たきりになってます。まあ、ものを書いたりの軽い作業は出来ますが、体を起こしたり、もちろん自分で歩くことも出来なかったですね。」

「わかりました。ありがとうございました。」

尾藤は部屋を出て行った。




「どう思うね?」

山さんは年配の鑑識係に聞く。

「まあ、シロじゃないですか?動機から見ても。それに、あのメッセージ。あれをガイ者が書いたにせよ、犯人が書いたにせよ、介助士の彼がそのまんま犯人では芸がない。」

「私もそう思う。」




そこで鑑識係の電話が鳴る。

「はい。そうですか、はい、わかりました。」
電話を切ると、

「山さん、やはりあのメモ、ガイ者の筆跡と、一致したそうです。」

「ずいぶん早いねえ。」

「ええ、国文学者だけに、鑑定の元になる書き物が豊富にあったので、やりやすかったみたいですよ。」

鑑識係の言葉に、山さんは頷いて、

「しかし、そうなるとますます尾藤の線は消えたなあ。」

「まあ、自分と思しきメモを見て、そのままにしておくのもおかしいですからねえ。」

「うん。それに最初からおかしいと思っていたんだが、やはり介護士のことを介助士とは言わないんじゃないかい?」

「確かに耳慣れないですね。」

山さんはそこで部屋をぐるりと見回す。さすがに国文学者の部屋とあって、四方の壁を書棚で覆いつくしている。わずかにドアとそれを開けるためのスペースが残されているくらいだ。

その中で山さんは、一冊の国語辞典を取り出す。パラパラとページをめ
くり、「介助士」なる言葉を調べる。やはりそんな語句は無かった。

「介護士」のほうを調べてみると、やはりそのものの語句はなかったものの、「介護」という語句の補足で、「介護(福祉)士」という語句が掲載されていた。

「やっぱり、のっとらんよ辞書にも。」

「まあ、新しい時代の言葉ですからねえ。」

鑑識係が答える。

山さんはそのままページをめくり、「かいじょ」という語を調べる。

「介助」以外に「かいじょ」と発音、表記するのは、「解除」という語句しかなかった。

「他には解除という語しかないねえ。そうすると「かいじょし」は「解除し」か。解除したという意味かな。」

「何を解除したのですかね?」

鑑識係も首を捻る。



「あのう。」

そこで順二が口を挟む。

「何だ?」

じろっと山さんが睨む。怖気づきながら、順二は言った。

「秋山氏には、勘当した一人息子がいます。それが最近この家の出入り
を許されたそうなんです。」

「誰に聞いた?」

「この家のお手伝いさんです。呼んできましょうか?」

「それはいいが、それとこれとどういう繋がりがあるんだ?」

山さんがそう聞くと、順二は少し得意げな顔になって、

「ですから、息子の勘当を「解除し」たってことかなと思って。」

山さんは苦虫を噛み潰した様な顔になり、

「まあいい。とにかく、そのお手伝いさんを呼んでこい。それとその当の息子に連絡は?」

「はい、さっき呼び出しまして。すぐに駆けつけるとのことです。」

「わかった。」

山さんが頷くのを見て、順二は三度、部屋を出て行った。

「いくらなんでも、それはねえよなあ。」

山さんはつぶやく。




つづく




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【2006/07/18 13:56】 | 小説 「かいじょし」 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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作家を目指しながらも、日常に追われる日々を過ごす37歳。
名古屋生まれの、名古屋育ち、だが現在は関東在住。
作家に限らず、同じように自分の才能を世の中に送り出したいと考えている方たちと、交流がしたいです。
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